不自然な感情
夏が終わり夜に落ち着きが返ってきた。
それと同時に他人の熱や生命力が僕から遠ざかっていた。
大学社会から遠ざかって1年、サークルという狭い集落での唯一の役回りもこの夏で終えた。
そうすると僕はいよいよ何の社会にも属していない孤独な人間になった。
孤独というと少し聞こえが綺麗だが、ただ社会的能力を失っているだけである。
この1ヶ月、僕はずっと1人で過ごしていた。
2、3度だけ人と会う機会があったが、すぐに体力が切れてシャットダウンしてしまっていた。
どことなくコミュニケーションもぎこちなく、会話に面白みを感じない。言葉を吐き出し返りを待つだけだった。
ある夜、大学に入った当時や高校時代が急にフラッシュバックした。人と会話して時間に際限なく楽しんで面白みを感じている。
誰かの話に共感し、自分の世界をオープンにする優しさがそこにはあった。
思い返すと今の自分には優しさが失われている。他人を思いやり奉仕したいという欲求がどこを探しても見当たらないのだ。
孤独は優しさを消し去る。
というより、優しさは一人で呼び覚まされる自然な感情ではなく、人間関係が生まれて初めて現れるもの。
優しさを欲する人はおそらく僕には近付いてこない。なぜなら僕自身、優しさを生み出す方法を忘れてしまったからだ。
居るはずもないが、この悲しい矛盾をぶっ壊しにくる人間が現れてくれることを掠れた声で願い続けよう。