感動ってポジティブなの?
僕は東北の田舎出身である。
もし東北から関東、さらに首都圏に向かうには那須高原という隔たりを越えて行かなければたどり着かない。
現在住んでいる場所は関東になったが、引っ越す前も今も景色はほとんど変わらない。
僕には首都圏の景色は完全に「非日常」なのである。
高いビル群にガラス張りの建物、整えられた並木に電光掲示板の数々。
当たり前のようにそれが建っているその事実にどう頑張っても驚きを隠し切れないのである。
一度、夜に東京から実家に帰る機会があった。
俗に言う「東京の夜景」に初めて触れたのである。
おお、これが噂に聞く都会の夜景かぁ
これを見て「キレイ〜」って言う人も沢山いるんだろうなぁ
なんて冷静に捉える自分も居たのだが、
自分はそれより何よりも、どうしようもない程虚しく感じたのである。
確かに綺麗だ。綺麗に磨かれ作られた景色が綺麗に光ってる。間違いない。
記憶にも残ってる。感動したから脳に景色が塗り付けられたんだろう。
でもなんだろう。この景色の説明をする時、明るい顔で元気に魅力を伝えられると思えない。
「虚無」「儚さ」「一生ついてくる不足感」「弱さ」
言葉に表してみるとこんな事しか出てこないのだ。
せっかく景色を見れたのに、なんだか憂鬱な気分になった。
元気削がれるなら「夜景は良い」みたいな安直な感動を押し付けないで欲しかった。
帰った後の汚い居酒屋の暖簾に人生で初めて充足感を覚えてしまった。